また、自治体の役割分担や権限移譲といった、非常に重要な課題であるにも関わらず、自治体関係者や政治家以外、殆どの国民が関心を持っていなかったことについて国民的議論の的に持っていったことも大変感謝しています。
ただ、何度か申し上げているように市の権限を奪って都道府県に移すというのは地方分権の流れに逆行するものであると言わざるを得ません。
実際、政令市は都道府県が行う業務の大半を行っています。二重行政を解消するのであれば大半を行っている政令市の方に残りの業務を移した方が効率的であるはずです。
また、橋下知事は「経済や産業政策は大きい母体で行う方が戦略的・効率的にできる」と主張されているようですが、他の政令市と違い、大阪市は人口267万人と大阪府の人口の3割、産業では過半という、圧倒的な規模を持っており、大阪府程度の大きさの自治体に移してもあまり効果はありません。
都道府県合併や道州制などによって、もう少し大きな広域自治体が存在するようになれば別ですが、現在の大阪市と大阪府の実力を考えれば大阪府に移すことによるデメリットの方が大きくなるでしょう。
もう一つ大阪都構想の主張として「大阪市は基礎自治体として大き過ぎる。30万程度の区を作り、区長を公選制にした方がより市民に近い行政ができる」というものがあります。これは一見聞こえが良い主張に思えますが、私には疑問です。
何のために市議会議員がいるのでしょうか。政令市は一般市と違って区毎に市議会議員を選出しますので、市議会議員を通して区民の意見を市政に反映させるシステムは既に存在します。
「いや、市議会議員は機能していない」と言う方もいらっしゃるかもしれません。確かに十分に機能していないかもしれません。議会改革を行うなどの不断の取り組みが必要でしょう。しかし、それは大阪都構想の区長・区議会も同じことが言えるのではないでしょうか。なぜこちらは機能することが前提なのでしょうか。
私からすれば長い歴史を誇る大阪市の市議会議員が機能していないと仮定するならば、区長・区議会議員も同様に機能せず、今よりも無駄な政治家と公職と何よりそれを選出するための莫大な選挙コストを増やすだけの結果に終わるのではないでしょうか。そんなことをするよりは区選出の議員と区民を交えた委員会を作るなど、今の制度の改善を行う方がよほど合理的です。
さらに申し上げると、大阪府の全ての市町村を再編成し、30万人程度の区にした場合に何が起こるか、基礎自治体を預かる立場からは容易に想像できます。それは地域コミュニティの分断です。
地域には自治会・社会福祉協議会・市民団体など様々な地域団体が存在し、長い歴史の中で一定の地域毎に連合体が存在します。基礎自治体の再編はそうした地域の繋がりを分断してしまう危険性があります。特に大阪市の区割りは千葉市などと異なり歴史的経緯に基づくものが多く、安易に再編成していいものではありません。
もちろん、そうした点に配慮しながら再編成するのでしょうが、合併はまだしも再編成には相当のリスクが存在することを考慮に入れた構想とは思えないのです。
いずれにしても大阪都構想はリスクがあまりに大きすぎる割にはそこまでメリットの無い、非常に非効率な手法に思えます。
冒頭に申し上げたとおり、大阪府と大阪市という特殊な二重行政の問題を解消しようとする着想は大変素晴らしいと思いますので、敵だ味方だというような話をするのではなく、十分に議論を深めていくべき話と考えています。
【関連する記事】
ここ最近立て続けに新聞で、羽田航空機騒音のことが取り上げられています。
千葉市の航空機騒音公害は、現状は何一つ改善されていないが、報道によって広く世間に問題が認識されるのは必要なことです。
千葉市長は、羽田航空機騒音公害について、何の明確なビジョンも打ち出していません。現ルートになってから一年たつと言うのに。当然ながら、多くの市民が千葉市長に不信感を抱いている。私もそうです。
羽田航空機騒音はもはや「公害」であるが、そこまでの問題だという認識が、千葉市長には今の今までまるで感じられない。
熊谷市長のような、航空機騒音公害を扱う気のない人間(と市民ははっきり感じる)が千葉市のトップであるというのは非常に迷惑であります。
市民は馬鹿ではありません。羽田航空機騒音公害について、熊谷市長が信頼ならないと多くの市民がいい加減気づいている。
http://gxc.google.com/gwt/x?client=ms-kddi_blended-jp&wsc=tb&wsi=f7272645fa151835&u=http%3A%2F%2Fwww.soga-jyo.com/cgi/QA/QA-touroku.cgi%3Fmode%3Dsyuusei%26no%3D709%26page%3D1&ei=iH2STtvUGsiEkQXuy7CMBA
千葉市は千葉県にとってそれほど大きな比率を占めているわけではないので政令市といっても二重行政の問題はそれほど大きくないと思います。大阪府と大阪市は大阪市の規模が大きすぎて完全に対等、もしくは大阪市の方が力があるところが問題の発端だと考えます。
また、政令市の区と特別区は確かに違います。
しかし、いずれにせよ大阪市の区割りが再編成され、全く別の区割りになることは事実であり、地域コミュニティにも影響は出るでしょう。
そもそも、東京都の特別区は権限が無さ過ぎて、これを本当に基礎自治体と言って良いのか、私は甚だ疑問です。
最後に航空機騒音の問題ですが、何度お答えしてもその回答を無視して同一の方が書き込みをされています。
解決に時間がかかっていてご不満に思う気持ちは理解しますが、以前お答えしたとおり、我々も強い姿勢で国に訴えており、現在国と個別協議を行い、解決の方向に向けて少しずつ進んでいます。いずれ市民の皆さんにもお伝えできると思います。
浦安の件と混同される方が多いのですが、浦安は元々沖合いを飛ぶことで合意していたものを国が無断で陸地近くを飛行したために抗議して改善されたもので、当然の話です。千葉市の場合は前市政の時代に合意したルート通り飛行しているため、浦安のように抗議、即改善といかないという事情があります。
橋下知事はおよそ県民の声をしっかり聞いているとは思えず、地道に今できることに背を向けているようにも思えます。
その点、熊谷市長はこのブログや頻繁な視察・イベント参加で、しっかりと市民の声を聞いてくれています。政令市の市長として、いちばん市民に近い市長だと思います。
多少かっこよく言えば、大阪市には、当時の東京高商教授から市長になった、関一市長以来の伝統とプライドがある、ということでしょうか。
下世話な話をすれば、大阪市長の報酬が絶えず知事のそれより上であることなどです。
それはさておき、橋下知事は真面目なのだ、と思います。一歩踏み込んで、府県の存在する意味に想いを巡らせてくれれば、と思います。
2点、追加で伺いたいことがあります。
1.
今回の投票について、高齢者と現役世代の
「世代間闘争」で高齢者側が勝った、
端的にいえば、公共交通機関優遇などの
既得権益を手放したくなかった高齢者たちが
改革を阻んだ、といった議論がネット上で
散見されます。
こういった議論に対してどのようにお考えでしょうか?
2.
今回の投票では、大阪に限らず、
現在の都道府県制が時代遅れになっているのかもしれない、
ということが示されているように思えました。
ブログで言及されている都道府県合併や
道州制については、現在の都道府県制度に
かわる対案だと思っています。
そこで、現在の都道府県制や、都道府県合併や
道州制について、どのようにお考えでしょうか?
また、これは横浜市が主張している特別自治市構想ともかなり重なる構想です。違いは、大阪では広域行政を府=都に一本化した方がいいほど府域が狭いのに対し、横浜や名古屋などは、政令市が広域行政機能ももったほうがいいほど、県が広いという条件の違いだと思います。橋下氏も、大阪都は、横浜市では特別自治市構想になると『大阪維新』言っています。
いずれにしても、政令市における区の自治権強化を何らかの方法で実現しないと、政令市の区はあまりに無力です。