未だに誤解している人が多いのですが、千葉市が財政危機に陥っているのはリーマンショック以降の経済不況による税収減が主な原因ではありません。だったら全ての自治体が財政危機に陥るはずですよね。
千葉市は来年度予算では270億円の収支不足が見込まれていますが、このうち税収減による影響は100億円強であり、その他は別の要因によるものです。
では何が要因なのでしょうか。大きく分けると4点ほどあります。
1.市債がこれ以上発行できなくなったこと
2.基金から借り入れるなどの禁じ手が限界に来たこと
3.借金の返済(公債費)がピークを迎えつつあること
4.生活保護費などの扶助費が増大していること
1.市債がこれ以上発行できないってどういうこと?
お金が足りないとまず真っ先に考えるのは借金ですが、千葉市の場合、実は借金できる金額に上限が設定されていて、それ以上借金をすることができない状況です。
夕張市の破たん以降、国は地方財政健全化法という法律を作り、財政状況が危ない自治体に借金返済プラン(公債費負担適正化計画)を提出させ、約束した金額以上は借金を認めないようになりました。
千葉市は政令市最悪の財政状況にも関わらず今までは500〜700億ほど景気よく借金をしてきましたが、財政健全化法の成立以降、400億円前後しか借金ができなくなりました。まずこれでお金が足りなくなりました。
2.基金からの借り入れの状況
もう一つ千葉市が財源対策として手を染めてきたものに"基金からの借り入れ"があります。
12月2日のブログで市債管理基金という市債を返すための基金から202億円も借りていることを書きましたが、それ以外にも市庁舎を建て替えるための基金など様々な基金からごっそり借金をしており、基金は殆どカラになっています。
隠れ借金とも言うべき禁じ手で長年誤魔化してきたわけですが、国の財政健全化法によってこうした隠れ借金も財政指標の計算に組み入れられることになり、これ以上手を染めると早期健全化団体に転落することになりました。(にも関わらず平成20・21年とこの手法に頼り、ますます崖っぷちになったわけですが…)
3.借金の返済(公債費)がピークを迎えつつあること
政令市移行後、都市基盤をあまりに性急に推し進め、足りないお金を市債・債務負担行為(約束手形のようなもの)・基金の取り崩しに頼って財政を急速に悪化させ、市債はあっという間に1兆円を超えてしまいました。
借金の返済は少しタイムラグがありますので、この間は400〜500億円ほどの返済で良かったのですが、ここにきてとうとう、この莫大な借金の返済がピークを迎えることになり、確定値ではありませんが平成21年度:570億、平成22年度:606億、それ以降もずっと600億円以上を返済する必要があり、ますますお金が足りなくなります。
4.生活保護費などの扶助費が増大していること
さらに高齢化に伴い、介護施設を始めとした高齢者福祉の予算が増え続ける上、昨今の経済危機によって生活保護受給者が急増しており、これだけでも数十億円レベルで支出が増えています。
ほかにも千葉市は借金ですら賄えない開発行為を債務負担行為(約束手形のようなもの)で強行していましたから、この履行もこれからどんどん押し寄せてきます。
さらに外郭団体に爆弾がいくつか眠っていますので、この処理でも相当のお金が必要になります。また、都市基盤を急激に整備したということはその更新やメンテナンスも一気に来るということです。それに備えて他市よりも潤沢にその資金を用意しておかなければならないのに一番お金がないというのは非常に危険な状況です。
●急成長しただけに止まらず…
他にも様々な要因がありますが、大きく挙げると以上のとおりです。財政健全化法の成立以外は全て予測できたことです。
右肩上がりの時代に最もその追い風を受けて急成長した千葉市はその勢いが鈍った後も拡大路線を止めることができず突き進み、破綻が見えた後もその綻(ほころ)びを隠し続けて傷口を深くし、ついには再起不能の直前にまで至っているわけです。
途中から誰が見ても異常な財政運営を行っていたわけですが、当時の情勢や雰囲気を考えると財政健全化に舵を切ることは相当の勇気が必要だったと思いますので、私は過去の市政の舵取り全てを断罪する気はありません。しかし、財政健全化法が成立し、近い将来に行き詰ることを把握できた後も本当の意味で市政を転換できなかったツケを市民が払わされることについては反省すべきでしょう(そういう人を選んだのも市民ではあるのですが)。
●市政に近い人ほどマインドコントロールが解けていない
私が最近なぜここまで財政について厳しいことを書いているかというと、未だに千葉市の財政の現状を理解していない人たちが多いことに危機感を感じているためです(もちろん理解して頂いている方もたくさんいらっしゃいます)。批判が目的ではありませんので詳しくは申しませんが、この1ヶ月驚きと脱力と無力感にさいなまれ続けています。
特に市政に近い人ほど"脱・財政危機宣言"を「市長のパフォーマンスだ」と本気で思っている人が多く、予備知識のない市民の方がむしろ素直に今回の宣言を受け止めて頂いているというのは皮肉なものです。それだけ今まで財政部局を中心に行ってきた市のマインドコントロールが深いということなのでしょう。
●情けが仇に
財政危機を隠してきたので、まずはそれを明らかにした上でなければ予算編成も中期の財政健全化プランも作れないので財政危機宣言を遅まきながら出し、ただし、市のイメージダウンや士気の低下を最小限に抑えるために「脱」という文字をつけるなど少しソフトな表現にしました。また、責任論などの非建設的な議論になることを避けたいという思いもありました。
しかし、千葉市の将来を考えて控えめに表現したことが身内には仇となり、未だに目が覚めていないという弊害に気づきましたので、少し書かせて頂いた次第です。
●沈みつつある船でケンカをしている場合ではない
30そこらの若者が議員になって半年で気づくレベルのことです(市長になってさらに内情を知り危機感を強めています)。
長年市政に関わってこられた方々は今までの固定概念を捨て去ってデータを冷静に見て欲しいと思います。パフォーマンスだ何だと下らないレベルで揉めている余裕はもはや千葉市には残されていません。ここから先は少しでもロスをすれば即アウトの綱渡りです。全員が一丸となって初めてイーブンに持ち込めることに気づくことが千葉市の再建の第一歩です。
私はまだギリギリ間に合うと信じています。
厳しい期間を乗り越えれば千葉市は恵まれた条件をたくさん有している都市ですから、再度羽ばたくことができるはずです。ピンチをチャンスに変える、それが未来への責任です。