意思決定スピードを早めるための
決裁規定等の見直しについて紹介します。
私が議員になって市役所の決裁文書を見た時に驚いたのは今時ハンコを使っている(民間は普通サイン)ことと、そのハンコの数が非常に多いことです。
今手元に市長決裁文書がありますが、この文書は私のハンコも含めて
合計32個も押印されています。
ハンコの問題点についてですが、まずハンコを押すのは事務が煩雑になるほか、各自が朱肉を持っており、大変不経済である点が問題です。
さらに、ハンコは本人が押印したかどうかの確認手段としては不十分な点があります。手彫りで無く、普通の文房具屋で売られているハンコであれば、誰でも入手可能です。また、多くの職員が机の引き出しにハンコを収納しており、代理押印も物理的には可能です。
「そこまで心配しなくても…」という意見もありますが、少なくともサイン(署名)という、一番本人性確認が確実な方法があるにも関わらずハンコにこだわる理由は低いと言えます。
ハンコについては今後サインでも可としますが、これは細かな話で本質的に問題なのはハンコの数です。
なぜここまでハンコの数が多いかと言うと、決裁ラインのハンコだけでも係長⇒課長補佐⇒課長⇒部長⇒局長⇒両副市長⇒市長と8個あり、さらに合議が必要な場合、総務局で担当⇒主査⇒課長補佐⇒課長⇒部長⇒局長などなど、担当者までもがハンコを押しているからです。
決裁規定上は課長・室長以上しか権限がなく、予算については課長以上しか権限はありません。
にも関わらず実際の決裁文書には権限が無い課長補佐や係長、さらには係員までもが押印している状況で、このことが決裁に時間のかかる要因の一つとなっています。ちなみに私が会社員だった頃(私の会社は千葉市役所とほぼ同じ社員数)は社長決裁と言えども決裁欄は10個を超えることは稀でした。
そのためなのか分かりませんが、千葉市役所では決裁文書は起案者が持って決裁を貰っていくスタイルではなく、例えば合議先に決裁を貰う場合は合議先に預けてしまっています。これでは自分の起案した決裁が今どこにあるのかも把握できません。
今では民間はもとより、自治体でも電子決裁の導入が進んでいますが、千葉市でも電子決裁が導入されています。しかし、このような決裁ルールをそのまま電子決裁に当てはめてしまった場合、32人が電子決裁システムを立ち上げボタンを押すことになり、むしろ非効率です。
決裁という意思決定を証拠として残すプロセスは規定以上に増やしてはいけません。
こうした話を市役所にしていた時によく言われたのは「規定は課長以上でも係長や係員がチェックする必要があります」という意見でした。
組織としての意思決定をする上で課長以上しかチェックしないというのはあり得ない話で、当然ラインを通って係員、係長、課長、部長と意思決定が進んでいくわけです。しかし、それと決裁文書のハンコとは本来別の話のはずです。少なくとも千葉市役所では文書のチェックと決裁のハンコがごちゃまぜになっていました。
重要案件では決裁の前に意思決定ラインに紙で説明が行われ、意思決定が事実上行われます。その意思決定を組織として形に残す行為が決裁文書です。
であるならば、残す行為としての決裁は組織で規定されている内容に合わせるべきですし、場合によっては一部簡略化することも可能です。もちろん決裁文書自体に間違いが無いよう注意は必要です。
世の中がとっくの昔にハンコ社会から変わってきているにも関わらず不思議に思わないこと、これだけのハンコの数と決裁の遅さを問題にしてこなかった役所の体質は改めていかなければなりません。また、日々ハンコに慣れ、市民向けの手続きにすらハンコを要求するようなことがあってはいけません。
少なくともこれを読んでいる市職員は自ら問題提起をする職員であって欲しいと思います。
市長選挙のマニフェストにもこの部分の改革を掲載していますし、人事課を中心に色々と検討を重ねてくれていて、既に今年度から合議先の見直しや下位職への権限移譲など改善をしていますが、さらに見直しを進めます。冒頭に紹介した32個のハンコも12個に減ります。
また、もう一つ決裁絡みで問題があります。
それは電子決裁率が30%程度にとどまっている点です。
電子決裁は文書のアーカイブ化が可能であり、検索容易性や流用性に優れているほか、ペーパーレス化にも寄与しますが、千葉市では添付文書があるものはパソコン画面内で閲覧が難しいなどの観点から電子決裁は一部に限定されています。
しかし、先ほど申し上げたように意思決定と決裁文書は分離して考えるべきであり、既に意思決定を紙で行っているものであれば仮に添付文書が膨大であったとしても電子決裁システム上で決裁が可能なはずです。ペーパーレス化のことを考えれば、逆に添付文書が多いものほど良いわけですから、この考え方では電子決裁を導入する意味がありません。
今後そうした観点から電子決裁の拡大について議論を進めていきます。
ただし、設計図のように紙ベースでしか資料が無く、電子ファイル化するために手間が必要なものについては分けて考える必要があります。
ちなみに市役所の出勤簿・旅行命令簿などは未だに毎日ハンコを押す形式です。タイムカードですらありません。
私は最初にそれを見た時「何十年前のオフィスに来たんだろう」と思いました。これを処理する庶務の稼動を考えると何ともったいないことかと思います。電子化と業務効率化という観点では民間と比べ10年以上、他の役所と比べても5年は遅れています。
ただ、市役所のフォローをしておくと、こうした電子化には最初にそれなりの費用が必要です。上層部が電子化に理解のある人間で無ければ下が企画しても通りません。千葉市は住民系システムも政令市で一番遅れていますので歴代トップの理解が無かったということに尽きると思います。
今、様々な分野で電子化を進めるよう指示していますし、業務改善の意識が高い部署は業務効率化のためシステム化を進めています。何でもシステム化すれば良いものではありませんが、業務改善によって数年でコストが回収できるものであればどんどんシステム化すべきです。